ゼミ・講義科目・卒論テーマの紹介

 現代世界と日本経済の仕組み、経済ニュースの背景などをやさしく、広く、そして深く解明し、日々の経済動向やニュースがよくわかるようになることをめざしています。経済問題だけでなく、とても複雑に見える国際事件や社会問題でさえも、経済を見る目から読み解いていくと、意外と単純にわかってしまう場合があります。「なぜ?」って、それは、人類の生存にとって、経済的営みは不可欠だからです。これなくして生きていけません。そこで、よりよき生存の条件と経済社会を研究する学問=「民」の「」としての経済学を探求します。

1.自己紹介

 1949年に、関東甲信越の一角、コメどころ・サケどころの新潟県、といっても清流と緑に囲まれた自然豊かなカントリーで生まれました。現在、群馬大学のある前橋市に在住しています。散歩が好きですが、下手なテニスも、一応趣味に入れておきます。
 当時、東京は神田駿河台界隈にあった中央大学(大学院商学研究科博士課程)をでてから、経済の先端を見てみたいと、(財)日本証券経済研究所の研究員になり、激動する現代経済を調査研究しました。
 1989年に、北国の大きな空と海に隣接する八戸大学で教鞭を執るようになり、1991年、『国債管理の構造分析ー国庫の資金繰りと金融・証券市場ー』(日本経済評論社、1990年刊)により、商学博士の学位(中央大学商博乙第56号)を取得しました。1996年から現在の群馬大学教育学部で、経済学の教育・研究に勤しんでいます。主な関心は、現代経済における主要な変化ー経済の金融化、情報化、グローバル化(国際化)などに着目して、現代の経済システムをめぐるさまざまな特徴と問題点について、欧米のシステムと比較しながら、主に実証的に探求することです。
 ただ、好奇心が比較的旺盛なのか、いろいろな社会経済問題にも関心を向けています。

2.新入生と2年生のみなさんへ

 新入生のみなさん合格おめでとう。そして大学生活にも慣れてきた2年生のみなさん、これからどんなことを学ぼうと考えていますか。経済学はみなさんを待っています。まず、みなさんに誤解しないでほしいことがあります。経済学は、本来、高等数学の学問ではありません。そもそも、経済(economy)とは、ecoー(家の)、ーnomy(管理)、つまり日常的な人々の暮らしを意味しています。
 ですから、経済学は、人々の経済生活に関する情報や事実を収集し、分析し、経済生活や経済社会における秩序やメカニズムを解明し、そこに内在する傾向や法則性を発見する学問です。「経世済民」(世の中を治めて、民を救済するー『広辞苑』)の学が、経済学です。数学が苦手でも全く心配しないでください。さまざまな経済的リスクにかこまれた先進国の住民としても、金融や経済の基礎知識・センスは、むしろ、「生活の知恵」であり、不可欠の教養でもある、といえます。
 グローバルな経済競争や株主・役員の短期的な利益を優先する「経済成長」にともなって、働いても生活保護水準の所得すら得ることのできない「ワーキングプア(働く貧困層)」が増大し、各分野での経済格差・所得格差が急速に拡大してきました。また人類の生存を危うくする地球環境の破壊が進展しています。このような混迷を深める現代にあって、経済学からその原因や解決の探求を探求することは、21世紀の未来をどのように展望するのか、といった視点からも、きわめて重要な意味をもっています。そして、なによりもいま、現実の経済が大激動期に入り、ぞくぞくするほど新しいテーマが転がっています。

3.ゼミナールの紹介ー気軽に研究室を訪ねて下さいー

 少人数で、ゼミナール(演習)や英文経済書の講読をやっています。場所は、研究室です。各自が、輪番で、テキストや資料などの内容を報告(A4×2枚=A3サイズに要約)してもらい、それを全員で討議します。
 英文経済書なら、音読し、翻訳する、といったやり方で、国際社会の経済社会情報などについて、理解を深めます。最終的には、卒業論文や修士論文の作成を支援します。演習や英文経済書講読のおよその内容は、以下の通りです。

4.経済学の演習

 この演習では、現代経済の動態に焦点をすえながら、経済学全般にわたる基礎知識や経済分析の方法を体得します。そして、目前で展開する現実の経済動向について、自分なりに分析できるように、生きた経済についての認識を深めます。
 また国際比較の視点にたって、現代日本の経済システムの特徴と問題点についても、探求していきます。
 適宜、トピックスについても取り上げ、検討します。ゼミ生が、報告と討論を繰り返すことを通じて、現代経済についての「生きた知識」を体得し、論理的な思考や批判的・創造的な精神を身につけ、日々のニュースや目前の経済現象について、「問題を発見し、分析し、解決する」視点から、自分なりに分析できるようになることをめざしています。

5.経済学講読

 英米の経済誌紙のThe Economist、Business Week、Financial Times、などを読みます。近年、経済の国際化が急速度で進展しています。それにともない国際社会における日本の地位や役割にも、大きな関心が寄せられています。それは、たんにGDPが世界有数の「経済大国」であるといった側面にとどまりません。対外経済摩擦、ジャパン・バッシングなど、日本の経済社会システムそのものにたいしても、欧米のメデアにおいて、繰り返し日本特集が組まれるような時代となりました。
 はたして21世紀において、現代日本の経済社会は、国際社会と平和的に共存していけるのでしょうか。国際社会の「目」は、日本をどのようにみているのでしょうか。また、いま何が求められ、日本の経済社会システムはどのような特徴や問題点をもっているのでしょうか。
 こうした諸課題について、海外の活字媒体(英文)を読むことで、考究していきます。

6.卒業論文と修士論文のテーマと発表会

 経済研究室では、年度末の2月末から3月初頭にかけて、卒業論文と修士論文の発表会を開催しています。各自が30分の持ち時間の中で、論文要旨の報告とディスカッションを行います。
 この発表会には、当事者である学部の4年生、大学院の2年生だけでなく、卒業生も含めて、広く参加者を募っています。発表会の後は、恒例のゼミの追い出しコンパとなります。これから研究室に所属する予定の学生諸君も、この発表会に参加し、論文報告を聞き、またディスカッションに加わることで、経済学や現実の経済問題について、より深く理解できるようになるにちがいありません。
以下は、いままでの卒論・修論のタイトルです。卒業生たちは、じつに多様な経済的・社会的な諸問題に取り組んでいることがわかります。
 

自立は消費者を救済するのかー消費者が目指すもう一つの地平線、戦争の実態と平和・軍縮へ向けての課題と解決策、日本の社会保障ー「しあわせ」とよべる社会の構築のために、日本の貧困・格差社会、少子化について考える、日中韓を中心とする東アジア共同体への展望、日本におけるインターネットビジネスの成長要因と今後の可能性、子供の貧困、消費者教育の歴史に対する考察ー消費者教育の温故知新を目指してー、環境保全と持続可能な発展との両立の可能性とその課題ーEUの先行事例を基にー、サハラ以南アフリカ諸国が抱える問題と経済成長の可能性、『東アジア共同体の可能性』・『原油の動きから見る経済 ──石油文明の行方』・『絶対的経済格差 ──アグリビジネスを通して考える資本主義経済の限界』・『スポーツの有する経済性について ──スポーツの変容とその問題点』『学校における金融教育ー現状および課題と今後の展開ー』・『21世紀の日中経済関係と東アジア経済共同体の展望』・『日本経済のための処方箋ー地域経済再生から日本を立て直すー』・『日本とドイツの社会経済ー社会保障の国際比較ー』・『商業の発展〜商店街と巨大ショッピングセンター』・『クルマ社会を問い直す−クルマを通して日本を考える−』・『一人一人が築く日本の未来〜少子高齢社会を迎えた日本の行く末〜』・『環境問題と経済』・『平和〜世界平和に向けた経済的戦略』・『経済社会の変貌と学校における金融経済教育〜将来の経済社会を担う子どもたちに向けて〜』・『政冷経熱下の日中経済関係』・『経済大国日本の行方〜Sun-set to Sun-rise〜』・『グローバル時代における自動車産業のあり方』・『現実的に非現実的な夢を見せるものー株ー』・『自動車産業における経済と環境の好循環社会をめざして』・『現代スポーツビジネスに関する一考察ー昨今のプロ野球の低迷からー』・『投資化する日本経済ー投資経済の特徴と問題点?』・『内なる国際化の実現に向けて』・『金融に関する現代的諸課題について』・『中古車市場から望む循環型車社会』・『レコード業界における通信技術の発達に起因する既存業界の崩壊』・『女性の経済的自立に向けてー現代女性の就労状況の考察』・『現代日本の中小企業』・『現代日本の財政構造について』・『現代軍拡構造の歩みと軍縮に向けての経済分析』・『女性と年金に関する一考察』・『企業中心社会・日本の労働と余暇に関する一考察』・『日本のODA(政府開発援助)の現状と今後の展望に関する一考察』・『豊かさを拒む日本の経済社会システム』・『レーガノミクスの分析』・『現代日本の中小企業』・『世界の農業・食糧問題』・『生命保険業に関する一考察』・『「循環型社会」へ向けて』・『日本の21世紀の内需』・『流通ー現在の小売業に関する一考察ー』、などなど、多様なテーマに挑戦しています。
 
 

7.講義科目の紹介
  ー経済学概論(国際経済を含む)・経済学特殊講義(金融経済論)・現代経済論・初等科社会ー

  経済学概論(国際経済を含む)

 20世紀から21世紀にかけて、日本と世界の経済環境は激動してきた。地球上のさまざまな国々の経済が、グローバル資本主義の大波に飲み込まれ、翻弄され続けている。
 本来、学問(経済学)の対象は、人々が日常的に接する経済生活であり、またそうした生活を支える人間に向けられていたはずである。衣食住を抜きにして人間生活は成り立たないように、人間存在を欠いた経済はありえない。本講義では、経済学の基礎理論に立ち返りながら、日本と世界の経済システムの特質と変容を検討し、その発展方向を考究する。適宜、トピックスについても取り上げ、検討する。
 わたしたちの暮らす「宇宙船・地球号」では、いまどんな経済活動が営まれているのだろうか。人類にとって、より望ましい経済システムとはどのようなシステムなのか。本講義の受講者は、こうした大きなテーマについても、自分自身の問題として考え、経済発展の方向性を検討してみましょう。
 

  経済学特殊講義(金融経済論)

 本講義は、日々の身近なニュースや経済のしくみに焦点を当て、それらがよく理解できるように、必要とされる金融や経済の基礎知識を提供しています。さらに、そうした基礎知識を「死んだ知識」に閉じこめないで、「生きた知識」として躍動させ、現代日本や世界の経済問題を自主的に分析できるように、ビッグバン・円高・株式・投資信託・M&A・財政赤字・デリバティブ・グローバル経済などについて解明し、問題分析の主なサンプルを提供しています。
 わが国は、規模のうえでは、まぎれもなく「経済大国」ですが、市民生活の豊かさとなると、むしろ「生活大国」とはいえない事情があるようです。日本型金融経済システムや経済社会のあり方は、先進国の一般的な基準からみて、多くの問題点も指摘されています。
 本講義では、充実した市民生活や市場のルールをめぐる国際社会(欧米)のよき先行事例にも学ぶことで、日本の経済社会をめぐる問題を発見し、また問題解決のあり方やその方向も検討します。適宜、トピックスについて も取り上げ、検討します。

 現代経済論 

 日本経済をめぐる環境と条件は、世紀の転換点にあって、大きな変動をみせています。戦後の奇跡的な高度経済成長、バブル経済の膨張と崩壊、長期不況を経て、ポスト冷戦と市場経済下の大競争、経済のグローバル化と情報化の急展開、男女共生社会への障害と展望、少子・高齢化社会の到来、為替相場に振り回される景気と経済、進展する政府のリストラと「規制緩和」、「黒字大国」日本の対外進出と国際批判の高まりなど、現代経済における構造変化とシステムの改変が急テンポで進展しています。
 他方、こうした激動の渦中にあって、より望ましい経済社会システムを求める国民の意思表示ー異議申し立てをするだけでなく、選択し創造する主権者として意思表示がみられる時代も訪れているようです。
 本講義では、激動する現代経済の新しい動向を射程に入れて日本経済の現状を解析し、その特徴と問題点を抽出しながら、より望ましい将来の展開方向について、わかりやすく提示していきます。適宜、トピックスについても取り上げ、検討します。

 初等科社会

 主に日々の新聞記事などを資料として用いて、経済のニュースなど身近な出来事を検討しつつ、私たちの生活する経済社会のあり方に関連したテーマをわかりやすく解題する。そして受講者がそれらのテーマを自分自身の問題として受け止め、問題の性格やその特徴、問題解決のビジョンなどについて、認識を深め、子どもたちにもわかるような工夫やアイディアなどを検討する。